【徹底解説】労働安全衛生法の概要について

労働安全衛生法エキスパート

成立の契機

 1970年代、それまでの日本の経済成長にも目を見張るものがありましたが、その反面、多くの労働災害が発生により人命が犠牲となっていました。そのような従来の経済成長のあり方に反省が加えられ、人命尊重の基本的理念に立ち、より強力で的確な労働災害防止を推進するために作られたのが安全衛生法です。

成立日等

 成立:昭和47年(1972年)6月2日

 公布:昭和47年6月8日(昭和47年 法律第五七号)

 施行:昭和47年10月1日

労働安全衛生法の位置付け

 労働安全衛生法は、従来の労働基準法第五章(安全及び衛生)を中核として、労働災害防止団体等に関する法律の第二章(労働災害防止計画)および第四章(特別規制)を統合したものを母体とし、そのうえに新規の規制事項、国の援助措置に関する規定等を加えたものです。

 労働安全衛生法は、形式的には労働基準法から分離独立したものとなっていますが、安全衛生に関する事項は労働者の労働条件の重要な一端を占めるものであり、労働安全衛生法と労働基準法は、一体としての関係に立つものであることが明らかにされています。

 労働安全衛生法の適用範囲

下記を除く事業を行う全ての者

  • 同居の親族のみを使用する事業または事務所に従事する者
  • 家事使用人
  • 船員法の適用を受ける船員
  • 国家公務員(五現業の職員を除く。) ※五現業とは→郵政・国有林野・印刷・造幣・アルコール専売

 なお、鉱山保安法第二条第二項および第四項の規定による鉱山の保安(衛生に関する通気および災害時の救護を含む。)については、第二章の規定(労働災害防止計画)を除き、この法律の規定は適用されない。 

関連通達

通達(昭四七・九・一八 発基第九一号)

〔労働安全衛生法の施行について〕

第一 趣旨

 近年のわが国の産業経済の発展は、世界にも類のない目ざましいものがあり、それに伴い、技術革新、生産設備の高度化等が急激に進展したが、この著しい経済興隆のかげに、今なお多くの労働者が労働災害を被っているという状況にある。

 最近における労働災害については、

(1) 建設業等屋外産業的業種における高い災害率

(2) 中小零細企業および構内下請企業における多発傾向

(3) 重大災害の増加傾向

(4) 新技術、新工法、有害な化学物質の多用等による新しい災害要因の増加および職業性疾病の増大

(5) 被災可能性の高い中高年齢労働者や未熟練労働者の増大

(6) 公害や公衆災害に関係のある労働災害の増大

 等の問題点があり、また、在来型の災害もなお、あとを断たない状況にある。

 この法律は、これらの問題点を踏まえ、最低基準の遵守確保の施策に加えて、事業場内における安全衛生責任体制の明確化、安全衛生に関する企業の自主的活動の促進の措置を講ずる等労働災害の防止に関する総合的、計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な作業環境の形成を促進することを目的として制定されたものである。

 この法律は、従来の労働基準法第五章(安全及び衛生)を中核として、労働災害防止団体等に関する法律(以下「災防法」という。)の第二章(労働災害防止計画)および第四章(特別規制)を統合したものを母体とし、そのうえに新規の規制事項、国の援助措置に関する規定等を加えたもので、わが国の労働災害の現状分析と見通しのうえに立ち、従来の労働災害防止のための施策についての実績を踏まえて、労働安全衛生に係る法制の充実強化を図ったものである。

 この法律がよくその機能を発揮するためには、労使をはじめ関係者の正しい理解と実践が必要である。こうした点にかんがみ、この法律の運用にあたっては、その趣旨を十分に関係者に説明し、その理解と協力を得るように努めなければならないものである。

 一九七〇年代に入り、従来の経済成長のあり方に反省が加えられ、国の施策の重点は国民福祉の向上へ向けられつつある。このような情勢のもとに、今後における労働災害防止対策は、人命尊重の基本的理念に立ち、この法律を軸として、より強力、より的確に推進されなければならない。

第二 この法律の基本的事項(抄)

1 この法律と労働基準法との関係

 この法律は、形式的には労働基準法から分離独立したものとなっているが、安全衛生に関する事項は労働者の労働条件の重要な一端を占めるものというべく、第一条(目的)、第三条第一項(事業者の責務)、附則第四条による改正後の労働基準法第四二条等の規定により、この法律と労働条件についての一般法である労働基準法とは、一体としての関係に立つものであることが明らかにされている。

 したがって、労働基準法の労働憲章的部分(具体的には第一条から第三条まで)は、この法律の施行にあたっても当然その基本とされなければならない。

 また、賃金、労働時間、休日などの一般的労働条件の状態は、労働災害の発生に密接な関連を有することにかんがみ、かつ、この法律の第一条の目的の中で「労働基準法と相まって、……労働者の安全と健康を確保する……ことを目的とする。」と謳っている趣旨に則り、この法律と労働基準法とは、一体的な運用が図られなければならないものである。

2 この法律の適用範囲

 この法律は、同居の親族のみを使用する事業または事務所を除き、原則として労働者を使用する全事業について適用されるが、つぎの(1)から(3)に掲げる者については適用されない。

(1) 家事使用人

(2) 船員法の適用を受ける船員

(3) 国家公務員(五現業の職員を除く。)

 なお、鉱山保安法第二条第二項および第四項の規定による鉱山の保安(衛生に関する通気および災害時の救護を含む。)については、第二章の規定(労働災害防止計画)を除き、この法律の規定は適用されない。

 また、機械等または有害物に対する流通規制については、労働基準法の適用範囲より拡大され、政令で定める一定の機械等または有害物の製造等を行なう者は、何人も、この法律による規制を受けることになった。 

通達(平一五・七・二 基発第〇七〇二〇〇三号)

〔改正の趣旨〕

 平成一四年三月に閣議決定された「公益法人に対する行政の関与の在り方の改革実施計画」を踏まえ、国から公益法人等が委託等を受けて行っている検査、検定、資格付与等の事務及び事業について、官民の役割分担及び規制改革の観点からの見直しを行うため、厚生労働大臣がこれらの事務及び事業を行わせる者を指定する制度から、法律で定める一定の要件に適合し、かつ、行政の裁量の余地のない形で登録を受けた者がこれを行う制度へと改める等の措置を講じることを目的としている。 

通達(昭四七・九・一八 基発第六〇二号)

 従来の労働基準法および労働災害防止団体等に関する法律(これに基づく命令を含む。)に関する通達で、法または令に相当する規定があるものについては、 当該規定により出されたものとして取り扱うこと。