メンタリストDaiGoさんに学ぶ転職術【ワーキングアイデンティティーとは?】

働く人のための悩み相談室

転職が成功する確率はコイン投げと一緒!?

近年、働く人の二人に一人は転職をしており、転職するということは当たり前の社会になっています。

しかしながら、厚生労働省が行う転職者実態調査の結果、転職に満足していると答えた人の割合は約50%となっています。

勇気を振り絞って高額な費用と時間を費やして転職しても、転職に満足している人は約半分しかいないのです。これでは一か八かコインを投げているのと変わりません。

転職活動が上手くいかない理由の一つとして、「従来の転職活動では足りない部分が多すぎる」という問題があります。

何が足りないのかを考える場合、メンタリストDaiGoさんの動画でも紹介された「ワーキングアイデンティティ」の考え方が参考になります。

ワーキングアイデンティティ(キャリアアイデンティティ)とは、”職業人の役割を果たす自分をどう見るか、働く自分を人にどう伝えるか、最終的には職業人生をどう生きるかといったこと”「ハーバード流 キャリアチェンジ術」(洋題:Working Identityより引用)“です。

このページでは、労働基準監督官として少なくとも1000人以上の労働者の相談を聞いた経験があり、アルバイトを含めると20社以上の仕事を経験して現在理想の働き方を実現している私がオススメする転職術【ワーキングアイデンティティ】について解説します。

「ワーキングアイデンティティ」の実践術

「自己分析や適職診断」だけでは足りない

自己分析や適職診断では大事な要素が抜けている

転職しようとおもったとき、誰もが真っ先に思いつくものの一つに、「自己分析や適職診断をしよう」ということがあります。

しかし、熱心に自己分析をするほど、陥ってしまう罠があります。それは、今の会社に影響を受けた自分を熱心に分析しても、将来なりたい姿の要素はあまり出てこないということです。

自己分析や適職診断は今のあなたの能力や性格を重要視するので、今辞めたいと思っている会社と同じような仕事が適職と診断されてしまいがちです。

あなたが転職したい理由はなんですか?仕事を変えたいという思いの中には、「将来はこうありたい」という非常に大切な思いがあるはずです。

今の自分を知ることも大切ですが、もっと大事なことは将来の自分がどうありたいかです。

自分のことを点ではなく線で知る

自己分析よりも、オススメの方法が「自分史(自分自身の物語)を作る」という方法です。

物心ついたときから現在まで、あなたのアイデンティティは様々なものに影響を受けて変化してきたはずです。

その出来事、その時の人との関わり、そのとき何を考え、どのように変わったかということを、まるで偉人のことのように、紙に書き出しストーリーを作成しましょう。

今、面倒くさいと思いましたよね?

私も面倒くさいと思ったので、実践するまで一ヶ月も先延ばしにしました。

でも大丈夫です。実際にやってみたら30分もかからず終わりました。

まず、

・自分の人生の悪い出来事ワースト3

・自分の人生の良い出来事ベスト3

・自分の人生の分岐点トップ3

あたりを書きだしてください。数は適当なので一つでも5つでも良いです。それぞれの出来事について、そのときの感情や思考を書き足すとなお良いでしょう。

それから、それを時系列に並べてください。

最後に適当にその間のエピソードを書けば終わりです。

次に自分史の作成例を紹介します。

自分史の作成例

中学生の頃にいじめにあい、いじめっ子たちを見返してやろうと勉強をがんばった。

その結果、世間で言うところの良い大学に入り、大学も優秀な成績で卒業し、大手銀行に就職した。

仕事は、長時間労働できつくて一緒に入社した同僚達は次々に辞めていった。私も仕事はきついし面白いと思うことはなかったが、給料だけはドンドン上がっていくので辞めるに辞められなかった。

あるとき、友人の結婚式で、何年振りかに高校時代の友人達と話した。

仕事の話について聞かれたとき、「給料だけはいいから。」としか、仕事の魅力について話せなかった。

「自虐風自慢かよ!」と笑う友人達は、やりがいを持って仕事をしているように見えて、心の底から羨ましいと思った。

どうでしょう。これで「アイデンティティ」が見えてきませんか。

例①の人は、勤勉で忍耐強い性格で、他の人が羨むような高収入銀行マンですが、自分の仕事に給料以外の魅力を感じていないようです。

この人は、このままでも裕福に暮らしていけますが、安定や収入を優先し過ぎると、何のために働いているのか分からなくてなってしまい、気づいた時には取り返しのつかない年齢になっていることも少なくありません。

すぐに仕事を辞めるという必要はありませんが、何らかのアクションは起こした方が良いと思います。

もう一つ、別の人の自分史の作成例を見てみましょう。

自分史の作成例

子供の時からマイペースとか天然とか言われ続けていた。一方で、一度何かに集中したら食事や睡眠さえも忘れて取り組んでしまうこともあった。

大学で一人暮らしを始めてからは、大学の講義をサボりまくった。日々、簡単に金が手に入るバイト、気軽に楽しめるゲームやネット動画に熱中して多くの時間を費やし、3回留年して大学を卒業した。

最初の仕事は、事務系の仕事であったが、単調な仕事で集中力が続かずに、ミスの連続で3ヶ月でうつ病になった。そのまま逃げるように仕事を辞めた。その後、転職を繰り返したが、せっかく希望する会社に入れても、ミスの連続で職場に居辛くなるか、途中で飽きて面倒くさく感じてしまうかのどちらかであった。

仕事のストレスを発散するためスマホゲームに夢中になり、数百万円ほど課金したので、30才を過ぎても借金はあっても貯金などなかった。「生きるのさえ面倒くさいし、親が死んだら死のう。」と思っている。

普段は考えないようにしているが、ふとした時に本当に俺の人生はこのままでいいのだろうかと考え込んでしまう。

例②の人の自分史からは、「飽き性」で「ミスが多い」という性質のために上手くいっていないことが伺えます。

しかしながら、この方のように一つのことに夢中になると周りが見えなくなる特性は、大きな欠点ではありますが、使い方によっては大きな武器にもなります。この人が活躍できるような環境に身を置くことで、自尊心を得ることができれば、大きく飛躍するチャンスがあります。

このように自分の人生を振り返りストーリーにすることで、自分のアイデンティティの変化の過程を辿ることができます。自分史は、今の一瞬を切り取った自己分析より、遥かに多くのことをあなたに教えてくれるはずです。

現在まで線がつながったら、そこからさらに未来に線をつなげていくわけですが、ほとんどの人にとって明確な一つの未来像を描くことは簡単なことではありません。でもそれで良いのです。

アイデンティティは無数にある

矛盾するようですが、そもそもアイデンティティとは無数にあるもの(正確には無数の性質の集合体)なのです。

いつも優しい人でも、ときに厳しい顔を見せるときはありますし、逆もまた然りです。その人の気分や状況によってアイデンティティは様々な側面を見せます。

その気まぐれなアイデンティティは、表面に見せる性質を変え続け、複数の未来像をあなたに見せるでしょう。そのどれが本物の自分であるかを考える意味はあまりありません。なぜなら全部本物であり偽物でもあるからです。

大事なことは、どの自分が好きなのか、どのアイデンティティを大切にしたいかということではないしょうか?

あなたができることは、そのたくさんの未来像をできるだけノートに記録することです。そして、どの選択肢が最も心地良いと感じるか(自分のアイデンティティのどこを伸ばすことに幸福を感じるか)を一つずつ試していくしかないのです。

「転職サイトなどで企業の情報を見まくる」だけでは足りない

皆がやっていることでは差はつかない

転職サイトに登録し、会社の情報を集めることは大事なことですが、それはほとんどの人がやっていることなので差はつきません。

また、文字だけの情報だと、どうしても年収や企業ブランドという分かりやすい価値を過大に評価してしまいがちになってしまいます。

他の人より、転職の成功率を上げたいのであれば、プラスアルファでやらなければならないことがあります。

とにかく小さく試してみる

あなたがやるべきことは、興味のある仕事に関することを小さく試してみることです。

どうやって試すのかと言えば、例えば、「ブログ・アプリ・電子書籍・YouTube・漫画などの作成、グッズ販売」などで稼ごうと思ったら、インターネット環境さえあれば、家でもできます。また、短期間だけ希望の会社と同じような職種でアルバイトをするという方法もあります。(副業禁止の会社の場合は、アルバイトすると税金の控除の関係で確定申告のタイミングでバレてしますので、今の会社を辞めると決めてから行うなどの工夫が必要です。)

他には、職業体験のサービス「仕事旅行」を活用してみたり、ハローワークで職業訓練を申し込んだりするという方法もあるでしょう。

昔から百聞は一見にしかずと言いますが、その言葉には、一見より一考、一考より一行と続きがあります(出所は不明)。つまり、一度経験したことを深く考察することは、ネットで集めた情報の何倍も役に立つということでしょう。

実際に新しいことを体験すると、自分のアイデンティティの変化に気がつくと思います。その変化が思考を新しいステージに進めてくれます。一方、その過程を踏まなければ、いくら思考を進めても机上の空論・絵に書いた餅になってしまいます。

興味がある仕事が自分に合っているのか試したいなら、実際にやってみることが一番ですが、合う仕事が見つかるまで転職を繰り返すのは骨の折れる作業です。そこで、体はいつでも戻れる状態(今の会社に在籍したまま)で、興味がある仕事に似たようなモノに小さく足を踏み入れ、いろんな可能性を試してみましょう。

こうすることで、お金の心配や焦りといった不安の感情に苛まれることなく、より良い転職のために試行錯誤できます。

私自身、やってみたいと思ったことは何でもやりました。YouTuber、作家、漫画家、ブロガー、投資家など、現在進行形で様々なことに挑戦しています。様々なことに挑戦することで自分の可能性を試すことはできましたし、本業に役に立つような様々なスキルも得ました。

投資を除けば、実際に稼いだお金はお小遣い程度ですが、仕事を続けているので焦りや後悔は全くありません。

むしろ自分の何かに挑戦するたびに自分のやりたいことが徐々にハッキリしてきた感覚があります。

「家族や親友に相談する」だけでは足りない。

家族や親友に相談するときのデメリット

転職する時に、多くの人が「家族や親友に」相談します。家族や親友であれば、相談も親身になって聞いてくれると思いますし、自分のことをよく知っているので、「今の自分を知る」際には家族や友人が最も信頼のおける情報をくれると思います。

しかし、「転職の相談について」は家族や親友の言うことを鵜呑みにしてはいけません。

なぜなら、先ほどもお話したように転職には「あなたが将来こうありたいという思い」が大切なのですが、家族や親友は「その思い」を尊重してくれないかもしれないからです。

大きな変化は大きなストレスを生みますので、人間は変化を嫌うという性質を持っています。今のあなたが好きな家族や親友は、あなた以上に「あなたが変わること」を恐れているかもしれません。そのような場合、あなたが大きく変わりたいということに反対してくるでしょう。

もちろん、あなたのことを思ってのことなので無下には扱えませんが、そのような意見は参考程度にして、「自分は」どうしたいのかという思いの方を大切にして選択した方が後悔は少ないでしょう。

あなたのコミュニティの端っこにいる人たちから情報を得る

それでは、他に誰に相談すれば良いでしょうか。それは、あなたのコミュニティの輪の端っこにいる人たちです。

例えば、長いこと連絡をとっていない高校時代の友人、仲の良い友人の知人、マッチングアプリで知り合ったばかりの人などのことです。

特に、自分と全く違う職種の仕事をしている人の話は、あなたの職探しに新しい視点を見出すことができるかもしれません。

人生のパートナーを探している人は、マッチングアプリなどで、出会いを求めながら他の仕事の情報を集めると一石二鳥かもしれません。

外に向かっている人から情報を得る

自分と同じように転職したがっていたり、既に転職をしたりした人から話を聞くのも、転職活動に大きく役に立ちます。

今の自分と似た状況から自分の興味のある仕事に転職した人(転職しようとしている人)を探し当て、「どのように転職したのか」、「転職して良かった点と悪かった点」などの話が聞けるとかなり参考になります。

そのような条件に当てはまり、尚且つ話をしてくれる人は、FacebookなどのSNSを活用しても中々見つかりませんが、意外と「今の会社の近く」に、いるかもしれません。

あなたが今の会社を辞めたい理由の一つに職場環境の悪さがあるなら、あなたの他にも辞めようと思っている人や過去に辞めていった人がいる可能性は高いでしょう。

その人たちと上手くつながり、信頼関係を築けたなら、「転職に役に立つ情報」と「仲間がいるという心強さ」を手に入れることができます。

あなたの今の職場に過去に辞めていった従業員や今まさに同じ悩みを抱えている人はいませんか?その人と上手く連絡を取ることができれば非常に参考になる話が聞けると思います。

私が以前勤めていたブラック企業では、同僚と二人で脱出計画を立てたことがあります。転職活動の情報共有ということも役に立ちましたが、何よりも長時間労働のあとに22時ころにラーメン屋で会社への不満と未来への希望について話せる人がいたことは、精神的な支えになりました。

そのときは、無事に二人ともブラック企業を脱出し、それぞれ自分が望む仕事に就くことができました。

「転職活動に費やす期間」が足りない

最短を目指さないこと

転職活動ってしんどくて、お金もかかるので、できるだけ効率的にやりたいですよね?みんな考えることは同じです。だからこそ、適職診断などで的を絞ってから、最短ルート転職できるように計画を組んで実践するという方法が主流です。

しかし、それで転職が成功するのは、初めからやりたいことが明確に定まっている人か、一部の運が良い人だけです。

今まで説明したように、確実に転職を成功させたいなら、あらゆる可能性を試さなければなりません。あらゆる可能性を試すには、ある程度の期間が必要になります。

いろいろなことを時間をかけて試してみても、結局は無駄なことだったということが頻発するかもしれません。また、いろいろ試しているうちに自分が何をしたいのか分からなくなり、混乱状態に陥ることもあるかもしれません。

しかし、その周り道や混乱も、全て「自分の望む人生を歩むためのアイデンティティを再形成する」ためには避けて通れないのです。

転職を単なる職探しで終わらせない

「自分の望む人生を歩むためのアイデンティティを再形成する」というと大袈裟に聞こえますが、転職とは本来そのような性質を持つものなのです。

転職活動の過渡期には焦りや不安から、誰しも感情が不安定になるものです。しかし、そんな時は一旦ゆっくり休んで心を落ち着かせましょう。決して自暴自棄になってはいけません。

睡眠時間を除けば、生活の半分近くを占める労働時間に、どこで誰と何をするかによって、あなたの人生は大きくかわります。だからこそ、仕事には、とことんこだわりましょう。

多くの転職サイトでは、次の仕事が見つかることをゴールにしていますが、あなたの人生は転職したあとも続きます。

転職は、あなたの望む人生を歩むための一過程に過ぎないということを意識して、周り道をしながらも納得できるまで根気強く努力することが大切です。

かくいう私も、今の仕事を続けながら、毎日様々なことに挑戦し続けています。

私は、今の仕事に大きな不満があるわけではなく、むしろ今までで一番満足しているのですが、もっと自分を活かせる働き方があるのではないかという可能性を捨てずに挑戦し続けています。

仕事をしながら、他のことをするのは辛いと感じることはありましたが、むしろ今は次の希望があるから本職の方にも力が入るようになりました。

もし、あなたが今のキャリアに満足しきれていないなら、一緒に挑戦してみませんか?

このページのまとめ

・従来の「自己分析や適職診断」だけでは足りない部分が多すぎる

・自分のことを点ではなく線で知るために自分史を作る

・転職する前に、副業などでとにかく小さく試してみる

・家族や親友に相談するだけでなく、あなたのコミュニティの端っこにいる人・外に向かっている人から情報を得る

・周り道をしてもよいので、転職を単なる職探しで終わらせない

このページを見た方におすすめの本など

人材管理、キャリア開発、組織変革をテーマにした講演や経営陣向け研修を各国で行なっている欧州経営大学院の教授が書いた、キャリアチェンジ(簡単に言うと転職)を成功させる方法について39人の例を紹介しながら説明した一冊です。

自分(アイデンティティ)を知らなければ、「自分に合った職」に就くなど不可能な話です。この本を読むと、自分のアイデンティティと向き合い、挑戦し続けることが、望む仕事を手に入れるための最も確実な方法だということがよくわかります。カタカナの外国人の名前がたくさん出てきて読みにくいところがあったり、紹介される仕事が医者だったり社長だったりと高給な仕事が多く自虐風自慢に感じたりするところも多々ありますが、他の人より一歩進んだ転職活動をしたいと言う方にはもちろん、自分のキャリアについて考えたいと言う人にもおすすめの一冊です。

私も、この本を読んで、何となくしか把握できていなかった自分のアイデンティティを知ることができました。