このページでは、自身が公務員として、地方(市役所)でも、国(厚生労働省)でも数年間働いた経験のあるチキンドルが、自身の経験・公務員の知り合いから聞いた話・法律や制度などを基に公務員になるメリットとデメリットを紹介します。
大学生や転職活動中の方で、公務員を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
公務員になるメリット
公務員という仕事は、大学生の就きたい職業ランキング、子供になってほしい職業ランキングなどで頻繁に1位の座を勝ち取っています。
公務員という仕事の何が人々の心をくすぐるのか、ここではそのメリットについて書いていきます。
安定している
公務員という仕事の魅力について、多くの人が口を揃えて「安定しているところ。」と言いいます。
確かに公務員は犯罪などと言った大きな問題を起こさない限り、解雇されませんので解雇によって職を失うことはありません。
さらには、年功序列制なので、居座り続ければ無能な方でも徐々に給料は上がっていきます。
しかし、公務員になれば絶対安定するかというと先の読めない世の中なので、そうとは断言できません。
特に、人口減少が続き過疎化している地方の小規模の役所(いわゆる消滅可能性都市)では、仕事がなくなる可能性は充分に考えられます。
※滅可能性都市とは、人口流出・少子化が進み、存続できなくなるおそれがある896の自治体を指します。参考
福利厚生が充実している
公務員が安定しているといわれる所以の一つが福利厚生の充実です。
ほとんどの公務員が、通勤手当や家賃補助をもらえます。病気(精神疾患含む)や怪我で仕事を長期間休むことになっても生活できるくらいの給与は支払われ続けます。
特に女性の場合、民間企業であれば、出産により仕事を辞めざるを得ない状況が発生することが多々あります。新卒で正社員として雇用された場合、出産後に以前の条件と同等以上の仕事に就くことは至難の技です。
公務員であれば、産休育休が比較的取りやすく、その後に同じ条件で働けます。私の元いた部署では3児を出産し育てる間、育休を使い続け、8年ぶりに同じ部署に復帰した女性がいました(その間は全額ではないですが手当も支払われていたようです)。
その他
その他のメリットとしては、住宅を建てるときのローンが通りやすいということが挙げられます。
また、異性からモテるようになるといったことがあるとも思います。
極端な例を上げると、以前、出会いを求めている時に、高収入限定街コンという企画をインターネットで発見しましたが、参加資格要件が【医者、弁護士、会社経営者、国家公務員のみ】となっていました。その情報を見た当時、私は国家公務員でしたが、手取給与は20万円程度であったので、医者などと同列に並べられていることに驚愕しました(その街コンには出席する勇気はありませんでしたが)。
公務員になるデメリット①役所はサービス残業の温床
ここからは意外と知られていない公務員になることのデメリットを紹介します。
タイムカードがないことの弊害
この令和の時代でも、タイムカードやICカードなどを使用して客観的に労働時間を記録しているお役所はほとんど存在しません。労働時間の管理を指導する立場の役所である労働基準監督署にさえタイムカードが設置されていないのが実情です。
ではどうやって、労働時間を把握しているのかと言うと、基本的には自己申告になります。労働基準監督署で多くの会社を見てきた私から言わせると自己申告はサービス残業を誘発しやすい労働時間の管理方法です(厚生労働省のガイドラインでも「やむを得ず自己申告制で労働時間を把握する場合」と記載されているように積極的には推奨されていない方法とされています。厚生労働省の職員の労働時間が自己申告で管理されているので説得力はありませんが。。)
自己申告での労働時間管理では、例えサービス残業が発覚しても「残業したのに正しく自己申告をしない本人が悪い。」と責任転換しやすい仕組みとなっております。タイムカードの記録を書き換えたり、打刻させる時間を操作したりするより、残業する労働者に圧をかける方が遥かに簡単にサービス残業を隠蔽できます。
部署ごとの予算という壁
公務員という職種には、サービス残業させることをより一層助長する「部署ごとの予算」というがあります。基本的に、役所で決められた部署ごとに人件費の予算は、一度決められたら増額にはならず、それを超えることは絶対に許されません。
人件費の予算は多くの場合、前年度の実績で決まります。上司や同僚・部下の突然の休職で人手が不足したり、景気や政治等の影響で社会状況が大きく変わって業務量が増えたりしても、予算の中からしか残業代は出ません。残業代が出ないなら仕事を切り上げて帰ればいいのですが、多くの場合、公務員の仕事は、市民、県民、国民の権利や生活に密接に関わる仕事であるので、仕事をしないで帰るということが許されない局面が多く発生します。
私が市役所で勤めている時、私の部署の残業代の上限は一人3万円程度でした。私を含めた若手職員数人は月に最低100時間以上の残業を行なっていましたので、残業代の時給は300円以下でした。
効率化しづらいお役所仕事
仕事の量は減らせないが、残業代には上限があるとなれば、あとは仕事の効率化によって労働時間を減らすしかありません。しかし、公務員は、仕事を効率化することも比較的難しいです。なぜなら、役所の仕事のほとんどが、法律や通達でマニュアル化されています。例え、無駄が多いマニュアルであっても、マニュアルに沿って仕事をしないと上司から怒られます。
役所の内部では、「県民に役に立たなかったりコスパが悪く国民の時間や税金を無駄にしていたりすることより、マニュアルに従わないことが悪である」とみなされがちです。
お役所仕事に対しては、よく利用者から苦情が寄せられますが、その融通の効かなさに最も苦悩している時間が長いのは公務員自身なのです(残念ながら何の疑問も持たなくなってしまった思考停止の公務員も多くいますが)。
労働基準法が適用されない?
労働の権利を守るための代表的な法律として、第一に労働基準法が挙げられますが、公務員だと労働基準法に守られないことが多々あります。
公務員を大きな区分で分けると、国の機関に使用される国家公務員と都道府県市町村等に使用される地方公務員に分かれます。まず、国家公務員についてですが、原則として労働基準法の適用はありません。そして、地方公務員については、労働基準法の一部適用があるものの、ほとんどが労働基準監督署の職権行使外(人事委員会が行う)であり、そこで働く公務員ですら適用があることを知らない人が多いので、実質的には労働基準法の適用がないようなものです。
このような要素が重なって、多くの公務員がサービス残業をせざるを得ない状況になっています。公務員志望の方で、働きたい役所が近くにある人は、夜に建物を見に行ってみましょう。毎日夜遅くまで煌々と明かりが灯っているなら、サービス残業かどうかはともかく、その時間まで働いている人がいるということです。
公務員になるデメリット②公務員は嫌われる
公務員バッシングによるストレス
公務員は人気の職業であるが故に、嫉妬の対象ともなり得ます。特に不景気になると、安定した公務員という職業に対するバッシングは加熱しがちです。
そもそも、公務員という仕事には、町役場、警察、消防、税務署、自衛隊、官僚、議員など、たくさんの種類があり、各々まったく異なる条件で、異なる働き方をしているにもかかわらず、一括りにされてしまいがちです。異性を都合の良いように一括りにしている人が一定数いるように、公務員を都合が良いように一括りにする人も少なくありません。
各種メディアでは公務員の良いところだけを取り上げがちですし、田舎の町役場の公務員ほど仕事が閑散としており、国家官僚のような高収入を得ている公務員がいると本気で信じている人も少なくありません。
実際には、田舎の町役場の公務員の給与は、それほど高くありませんし、国家官僚については、華やかな経歴や長い労働時間から考えると決して高い給料ではないのです。(※華やかな経歴があって長く働いているから国民の役に立っているとは限りませんが)
そのような事実を、メディアや自身の羨望が作り出した架空の公務員像を信じている人たちが理解することはなく、彼らは公務員がまるで罪人であるかのように振る舞ってきます。このような人たちを相手にするのは、非常に精神力を消耗します。
また、そのような理不尽なクレームだけでなく、業務に無駄が多く公費が適正に使われていないという正論を言われることもあります。これに関しては、個人的に至極真っ当な意見とは思いますが、それを窓口の職員に言われても、どうすることもできません。公務員の多くは、現場を知らない議員や官僚などの上部層が作った法律や制度に基づいて仕事をする義務があるため、独断で対応を変えることはできないのです。
転職するときの壁
公務員を辞めたくなったときにも不具合が生じます。公務員を辞めた場合、自分で事業を起こして稼ぐという方法もありますが、多くの人は転職を考えると思います。
公務員から他の公務員に転職するなら、試験勉強もしやすく、志望動機も書きやすいとは思います。しかし、多くの官公庁では20代後半までしか受験を募集していません。
公務員から民間経営の会社に転職するとなると大変です。おそらく公務員での職歴はあまりプラスに評価されません(むしろ「楽で安定した公務員を辞めるなんて、よっぽど能力が低いか問題があるのでは?」と考えられがちです)ので、何か資格や専門知識が必要となってきます。
それでも公務員になりたい人へ
公務員でないとできない仕事も多く存在することは確かなことであるため、そこに強く魅力を感じて公務員になりたいという人は、多少労働環境が悪くても後悔はないかもしれません。
しかし、とりあえず安定してそうだからとか、何となく人の役に立つ仕事がしたいとか(民間企業でも人の役に立てる仕事は充分にできます)、そう言った適当な理由で公務員を志望すると痛い目を見るかもしれませんので充分に気をつけましょう。
ちなみに向いてなかったということもありますが、私の数多くの転職経験の中で、最も労働時間が長く、唯一うつ病にさせたのは「市役所」での事務作業でした。
公務員であっても、労働環境に恵まれた職場はたくさんありますが、公務員だから恵まれた労働環境であると思い込んでしまうことは危険です。